ボールペンを選ぶとき、油性と水性、一体どっちがいいのだろうかと悩んだ経験はありませんか。
私たちの日常やビジネスシーンに欠かせない筆記具ですが、ボールペンの油性と水性の違いをしっかり理解している方は意外と少ないかもしれません。油性ボールペンの特徴はよく知られているものの、市場全体で見ると果たして油性と水性ではどっちが多いのか、また、最近よく聞くゲルインクを含めた油性・水性、 ゲルインクの見分け方についても気になるところです。
特に履歴書への記入や大切なビジネス文書を作成する際には、適切なペン選びが求められます。さらに、書いた文字が水に濡れてしまった場合、油性と水性で落ちないのはどちらなのか、といった実用的な疑問も重要になってくるでしょう。
この記事では、そうした様々な疑問にお答えし、あなたに最適な一本を見つけるお手伝いをします。
この記事のポイント
- 油性・水性・ゲルインクそれぞれの基本的な特徴と違い
- 各インクタイプのメリット、デメリット、そして見分け方のポイント
- 履歴書作成やビジネスシーンなど、用途に応じた最適なインクの選び方
- インクの耐水性や保存性に関する知識と、それに基づくペンの選択基準
ボールペンの油性と水性その基本的な違いを解説
ボールペン選びの基本となるのが、インクの「油性」と「水性」の違いです。油性インクは耐水性や筆跡の保存性に優れ、しっかりとした書き味が特徴。一方、水性インクは軽い筆圧でサラサラと書け、発色の鮮やかさが魅力です。しかし、それぞれにメリットとデメリットが存在します。
近年では、両者の長所を併せ持つゲルインクも人気を集めています。
前半では、ボールペンの油性インクと水性インクが持つ基本的な特性、インクの成分による違い、そしてゲルインクの位置づけまで、インク選びに不可欠な基礎知識をわかりやすくご説明します。
あなたに合った一本を見つけるための第一歩となるでしょう。
油性ボールペンの特徴とは?
油性ボールペンは、そのインクに有機溶剤を使用しているのが最大の特徴です。この有機溶剤によって、インクの粘度が高く、しっかりとした書きごたえを感じさせてくれます。
メリット:耐久性と速乾性
油性インクの大きなメリットは、筆跡の耐久性に優れている点です。
耐水性が高いため、水に濡れてもにじみにくく、書いた文字が消えにくい性質を持っています。また、耐光性にも優れており、太陽光や蛍光灯の光による色あせも起こりにくいです。このため、契約書や公的な書類、長期間保存したい文書への記入に適しています。
さらに、油性インクは紙に浸透しすぎず、表面で比較的速く乾くため、書いた直後に手でこすってしまったり、他の紙を汚してしまったりするリスクを低減できます。複写式の伝票など、筆圧をしっかりかけて書き込む必要がある場合にも、油性ボールペンは力を伝えやすく、はっきりとした筆跡を残せるため重宝されます。
デメリットと注意点:書き味とインクボテ
一方で、油性インクのデメリットとしては、インクの粘度が高いことに起因する点がいくつか挙げられます。
まず、書き味が水性ボールペンに比べて重く感じられることがあります。軽い力でサラサラと書きたい方にとっては、少し筆圧が必要になるかもしれません。 また、ペン先にインクが固まりやすく、時折「インクボテ」と呼ばれるインクの塊が紙に付着してしまうことがあります。
これは、特に長期間使用しなかった後や、ペン先の状態によっては発生しやすくなります。書き始めにかすれが生じることも、油性インクでは時折見られる現象です。 発色の鮮やかさという点では、水性インクに比べてやや劣る傾向があり、カラーバリエーションも限られていることが多いです。
近年では、これらのデメリットを改善した「低粘度油性インク」も開発されています。従来の油性インクの長所である耐久性や速乾性を保ちつつ、より滑らかで軽い書き心地を実現しており、人気が高まっています。
ご自身の好みや用途に合わせて、従来の油性ボールペンと低粘度油性ボールペンを比較検討することも一つの方法です。
水性ボールペンの特徴も解説
水性ボールペンは、インクの溶剤として水を使用していることが大きな特徴です。
これにより、油性ボールペンとは異なる多くの魅力を持っています。
メリット:軽やかな書き味と鮮やかな発色
水性インク最大のメリットは、その軽やかで滑らかな書き味にあります。
インクの粘度が低いため、筆圧をほとんどかけなくてもサラサラと筆記でき、万年筆に近い感覚で文字を書くことが可能です。このため、長時間の筆記でも手が疲れにくく、多くの文字を書き記す学生や、アイデアを素早くメモしたい方に適しています。
また、発色が非常に鮮やかで、インクの色の種類が豊富な点も水性ボールペンの大きな魅力です。微妙な色彩の違いも表現しやすく、ノートの色分けや手帳のデコレーション、イラスト作成など、色を楽しみながら使いたい場合に最適です。
インクの出も安定しており、書き出しのかすれやインクボテが起こりにくいのも利点と言えるでしょう。
デメリットと注意点:耐水性と裏抜け
一方、水性インクのデメリットとして最も注意すべきは、耐水性の低さです。
水に溶ける性質を持っているため、書いた文字が水滴や湿気、手汗などによってにじんでしまうことがあります。大切な書類や、水に濡れる可能性のある場所での使用には注意が必要です。
また、インクが紙の繊維に浸透しやすいため、紙質によっては裏側までインクが染み出す「裏抜け」が発生することがあります。特に薄い紙や吸水性の高い紙への筆記は、裏抜けのリスクが高まります。
同様の理由から、表面がコーティングされたツルツルとした紙への筆記にはあまり向いていません。インクが乾くのに油性インクよりもやや時間がかかる場合があり、書いた直後に触れると擦れてしまうこともあります。 これらの特性から、水性ボールペンの多くはペン先の乾燥を防ぐためにキャップ式が採用されています。
水性インクの中でも、後述する「顔料インク」を使用したものは、染料インクに比べて耐水性や耐光性が向上している製品もあります。用途に応じてインクの種類を細かく確認することが大切です。
油性・水性・ゲルの見分け方は?
店頭で多くのボールペンが並んでいると、どれが油性でどれが水性、あるいはゲルインクなのか、一見して分かりにくいことがあります。
しかし、いくつかのポイントを押さえることで、これらのインクの種類を見分ける手助けになります。
ペン本体の表示を確認する
最も確実な方法は、ボールペンの本体やパッケージに記載されている情報を確認することです。多くの製品には「油性」「水性」「ゲルインク」といった表記が明記されています。また、リフィル(替え芯)にもインクの種類が記載されている場合が多いので、使用中のペンであればリフィルを確認してみるのも良いでしょう。
書き味や筆跡で判断する
実際に試し書きができる場合は、書き味や筆跡からある程度推測できます。
油性インクは、一般的に粘り気のあるしっかりとした書き心地で、筆跡もやや細めに出る傾向があります。インクの乾きも比較的速いです。
水性インクは、サラサラとした軽い書き心地で、インクが紙に広がりやすく、ボール径に対して筆跡がやや太めになることがあります。発色が鮮やかであることも特徴の一つです。
ゲルインクは、水性インクに近い滑らかな書き心地でありながら、油性インクのようにくっきりとした濃い筆跡になることが多いです。速乾性や耐水性に優れた製品も多くあります。
キャップの有無やペンの構造
一般的に、ペン先が乾燥しやすい水性ボールペンやゲルインクボールペンは、キャップ式になっている製品が多く見られます。一方、油性ボールペンはノック式の製品が多い傾向にありますが、近年では技術の進歩により、ノック式の水性ペンやゲルペンも増えているため、これだけで断定するのは難しいです。
インクの色やにじみ具合を試す
もし可能であれば、試し書きした筆跡に少量の水を垂らしてみるのも一つの方法です。水性染料インクであれば水に触れるとにじみやすいですが、油性インクや顔料系の水性・ゲルインクはにじみにくいです。ただし、この方法はあくまで簡易的なものであり、製品によっては判断が難しい場合もあります。
最終的には製品情報を確認するのが最も確実ですが、これらのポイントを参考にすることで、大まかな見当をつけることができるでしょう。
ゲルインクは油性・水性どっち?
「ゲルインク」という言葉をよく耳にしますが、これは油性インクなのでしょうか、それとも水性インクなのでしょうか。
結論から言うと、ゲルインクは水性インクの一種に分類されます。
ゲルインクは、水性の溶剤に「ゲル化剤」という特殊な添加物を加えることで、インクに粘性を持たせたものです。このゲル化剤の働きにより、ゲルインクは非常にユニークな特性を発揮します。
普段、ペン軸の中にある状態では、ゲルインクは比較的粘度が高いゲル状を保っています。これにより、インクのボタ落ちやペン先からの漏れ出しを防ぎます。
しかし、筆記する際にペン先のボールが回転すると、その力でインクの粘度が下がり、サラサラとした液体に近い状態に変化します。この特性によって、水性インクのような滑らかな書き心地が得られるのです。 そして、紙に書かれたインクは、再びゲル化剤の作用で素早く粘度を取り戻し、紙の表面に定着します。
これにより、水性インクの弱点であったにじみやすさや裏抜けを抑え、油性インクに近い耐水性や速乾性を実現しています。
ゲルインクのメリットとデメリット
ゲルインクの最大のメリットは、前述の通り、水性インクの「滑らかな書き味」「鮮やかな発色」と、油性インクの「耐水性」「にじみにくさ」といった、両者の良いところを併せ持っている点です。
これにより、筆圧が弱い方でもくっきりとした文字が書け、カラーバリエーションも豊富なので、ノート作成から公的な書類まで幅広く対応できます。 また、インクの出が安定しており、書き出しのかすれも少ないため、快適な筆記が可能です。
一方で、デメリットとしては、油性インクや一般的な水性インクに比べて、インクの減りが早い傾向にあることが挙げられます。これは、滑らかな書き味を実現するためにインクの吐出量が多めになっているためと考えられます。
頻繁に使用する場合は、替え芯のストックを用意しておくと安心です。 また、製品によっては乾燥時間がわずかに長いものや、特定の紙質との相性が良くない場合もまれにあります。
このように、ゲルインクは水性インクをベースにしながら、油性インクの利点も取り入れた高機能なインクとして、現在のボールペン市場で非常に人気のあるタイプとなっています。
インクの成分:染料と顔料の違いは?
ボールペンのインクの色を作り出している「色素」には、主に「染料」と「顔料」の2種類が存在します。これらの色素の違いは、インクの特性や筆跡の仕上がりに大きく影響します。
染料インクの特徴
染料インクは、色素が溶剤(水や有機溶剤)に完全に溶け込んでいる状態のインクです。水彩絵の具のように、紙の繊維の奥深くまで浸透して着色するため、発色が非常に鮮やかで、透明感のある美しい筆跡が得られます。
色の種類も豊富で、混色して新しい色を作り出すことも比較的容易なため、カラーボールペンなどに多く用いられています。書き味もサラサラと滑らかで、軽い筆圧でもスムーズに書けるのが特徴です。
しかし、染料インクは耐水性や耐光性に劣るというデメリットがあります。
水に濡れると色素が溶け出してにじんでしまったり、直射日光や蛍光灯の光に長時間さらされると色あせや変色が起こりやすかったりします。そのため、長期保存を目的とする書類や、屋外での使用にはあまり向いていません。
顔料インクの特徴
一方、顔料インクは、色素が溶剤に溶けず、微細な粒子として分散している状態のインクです。筆記すると、これらの顔料粒子が紙の表面に残り、固着することで着色します。
顔料インクの最大のメリットは、耐水性と耐光性に優れている点です。水に濡れてもにじみにくく、光による色あせも少ないため、筆跡を長期間鮮明に保つことができます。このため、公文書や契約書、宛名書きなど、保存性が求められる筆記に適しています。
また、筆跡が紙の表面に留まるため、裏抜けしにくいという利点もあります。インクがくっきりとしており、隠蔽性が高いのも特徴です。
デメリットとしては、染料インクに比べて色の鮮やかさや透明感がやや劣る場合があることや、色の種類が限られる傾向にあることが挙げられます。また、顔料の粒子がペン先で詰まることを防ぐため、インクの粘度調整などに高度な技術が必要とされます。
油性ボールペン、水性ボールペン、ゲルインクボールペンのいずれにも、染料インクと顔料インクが使用されています。
例えば、「水性顔料インク」と表示されていれば、それは水性インクの滑らかな書き味と、顔料インクの優れた耐久性を併せ持ったインクであることを意味します。用途や求める筆跡の特性に応じて、インクの種類だけでなく、使用されている色素の種類にも注目してみると良いでしょう。
市場では油性・水性どっちが多い?
ボールペンを選ぶ際に、「油性インクと水性インク、市場全体で見るとどちらのタイプが多く流通しているのだろうか」と疑問に思う方もいらっしゃるかもしれません。
結論から申し上げますと、近年ではインク技術の進化と多様化により一概には言えませんが、ゲルインクボールペンの台頭が市場に大きな影響を与えています。
かつてボールペンと言えば、油性ボールペンが主流の時代が長く続いていました。油性インクは、その耐久性や速乾性から事務用途を中心に広く普及し、多くの人に親しまれてきました。しかし、水性ボールペンが登場し、その軽い書き味と鮮やかな発色で人気を集め始めました。
そして、1980年代に日本でゲルインクボールペンが開発されると、市場の勢力図は大きく変化しました。前述の通り、ゲルインクは水性インクの滑らかさと油性インクの耐水性やにじみにくさを兼ね備えた、いわば「ハイブリッド型」のインクです。
この使い勝手の良さが消費者に広く受け入れられ、ゲルインクボールペンのシェアは急速に拡大しました。日本筆記具工業会の統計データを見ても、ゲルインクボールペンを含む水性系ボールペンの販売金額や数量が、油性ボールペンを上回る傾向が続いています。
この背景には、ゲルインクの性能向上に加え、色の種類の豊富さやデザイン性の高い製品が次々と登場したことも影響していると考えられます。また、筆記具に対する消費者のニーズが多様化し、単に「書ける」だけでなく、「書き心地の良さ」や「表現の豊かさ」を求める人が増えたことも、ゲルインクの人気を後押ししています。
もちろん、油性ボールペンも進化を続けています。特に低粘度油性インク(サラサラ系油性インク)の登場は、従来の油性インクのイメージを覆す滑らかな書き心地を実現し、新たなファン層を獲得しています。これにより、油性ボールペンも依然として事務用途や特定のニーズにおいては根強い人気を保っています。
このように、現在のボールペン市場は、油性、水性、そしてゲルインクやエマルジョンインクといった新しいタイプのインクがそれぞれの特徴を活かし、共存している状況と言えます。どちらか一方が圧倒的に多いというよりは、消費者の用途や好みに応じて多様な選択肢が提供されていると理解するのが適切でしょう。
ボールペンの油性と水性の選び方は?用途別に徹底比較ガイド
インクの基本的な違いを理解したら、次は実践的な選び方です。
ボールペンは、いつ、どこで、何に使うかによって最適な一本が異なります。例えば、大切な書類への記入、日々の学習ノート、あるいはビジネスシーンでのメモ取りなど、用途によって求められるインクの特性は変わってきます。
後半では、書き心地の好みはもちろん、筆跡の耐久性、速乾性、そして紙との相性といった実用的な観点から、ボールペンの油性インクと水性インクをどのように選び分けるべきかを具体的に解説します。
あなたの目的や利用シーンにぴったりのボールペンを見つけ、より快適な筆記生活を送るためのヒントを提供します。
水性インクと油性インクどっちがいい?
「結局のところ、水性インクと油性インク、どちらを選べば良いのだろう?」という疑問は、多くの方が抱くものです。
どちらが良いかは一概には言えず、筆記する目的、重視するポイント、そして個人の好みによって最適な選択は異なります。
書き心地と筆圧で選ぶ
まず、書き心地の好みは大きな選択基準となります。軽い力でサラサラと滑らかに書きたい方、長時間の筆記で手の疲れを軽減したい方には、水性インクやゲルインクがおすすめです。これらのインクは筆圧をあまり必要としないため、スムーズな運筆が可能です。
一方、しっかりとした書きごたえを求める方や、複写式の伝票など、ある程度の筆圧をかけて書きたい場合には、油性インクが適しています。油性インクの適度な抵抗感は、文字を丁寧に書きたいという方にも好まれることがあります。
耐久性と保存性で選ぶ
書いた文字を長期間保存したい場合や、水濡れのリスクがある場合には、耐久性が重要なポイントになります。油性インク、特に顔料系のものは耐水性、耐光性に優れており、筆跡が劣化しにくいため、重要書類や宛名書きに適しています。
ゲルインクの中にも顔料を使用したものは同様の耐久性が期待できます。 これに対し、水性染料インクは水に弱く、光による色あせも起こりやすいため、長期保存や水濡れが想定される用途にはあまり向きません。
発色と色の豊富さで選ぶ
ノートや手帳をカラフルに彩りたい、イラストを描きたいといった場合には、発色の鮮やかさと色の種類の豊富さが決め手となります。この点では、水性インクやゲルインクが圧倒的に優位です。
微妙なニュアンスの色や、ラメ入り、メタリックカラーといった特殊なインクも楽しむことができます。 油性インクは、一般的に色のバリエーションが少なく、発色も水性系に比べると落ち着いた印象になることが多いです。
用紙の種類で選ぶ
筆記する用紙の種類も考慮に入れるべき点です。薄い紙や吸水性の高い紙に書く場合、水性インクは裏抜けしやすい傾向があります。また、表面がコーティングされたツルツルした紙には、油性インクの方が定着しやすい場合があります。
これらの点を総合的に比較検討し、ご自身の使い方に最も合ったインクタイプを選ぶことが、快適なボールペンライフにつながります。状況に応じて複数の種類のボールペンを使い分けるのも賢い方法と言えるでしょう。
特徴 | 油性インク | 水性インク(染料) | ゲルインク(顔料系が多い) |
---|---|---|---|
書き味 | 重め、しっかり | 軽い、サラサラ | 滑らか、軽い |
耐水性 | 優れている | 劣る | 優れている製品が多い |
耐光性 | 優れている | 劣る | 優れている製品が多い |
速乾性 | やや速い | やや遅い | 製品による(速乾タイプあり) |
発色 | やや劣る | 鮮やか | 鮮やか |
色数 | 少なめ | 多い | 多い |
にじみ | しにくい | しやすい | しにくい製品が多い |
裏抜け | しにくい | しやすい | しにくい製品が多い |
主な用途 | 事務、複写伝票、長期保存書類 | ノート、手紙、イラスト、軽い筆記 | 事務、学習、手帳、オールマイティ |
注意点 | インクボテ、書き出しのかすれがある場合 | 水濡れ注意、キャップ式が多い | インクの減りが早い傾向 |
水性・油性インクを履歴書で使う際の注意点は?
履歴書は、就職や転職活動において自身をアピールするための重要な書類です。そのため、使用するボールペンにも気を配る必要があります。ここでは、履歴書作成時に水性インクと油性インクのどちらを選ぶべきか、またその際の注意点について解説します。
履歴書には「消えないインク」が基本
まず大前提として、履歴書には改ざんを防ぐため、そして長期的に保存されることを考慮して、「簡単には消えないインク」で書くのがマナーです。この点から、摩擦熱で消えるタイプのボールペン(フリクションペンなど)は絶対に使用してはいけません。
油性インクの利用
油性インク、特に黒色の顔料インクを使用したボールペンは、履歴書作成に適している選択肢の一つです。耐水性、耐光性に優れているため、万が一水に濡れてしまったり、長期間保管されたりしても、筆跡が劣化しにくいというメリットがあります。
また、インクがにじみにくいため、くっきりとした読みやすい文字を書くことができます。 ただし、従来の油性インクは書き味が重く、インクボテが発生しやすいという点がありましたが、近年主流の低粘度油性インクであれば、滑らかな書き心地でインクボテも起こりにくいため、ストレスなく筆記できるでしょう。
水性インク(顔料)の利用
水性インクを使用する場合でも、顔料インクであれば履歴書に使用できます。水性顔料インクは、水性インク特有の滑らかな書き味でありながら、顔料の特性である耐水性・耐光性を備えているため、履歴書に適したインクと言えます。
発色が良く、くっきりとした文字が書ける点もメリットです。 ただし、水性染料インクは水ににじみやすく、保存性にも劣るため、履歴書への使用は避けるべきです。
ゲルインクの利用
ゲルインクボールペンも、履歴書作成に非常に適しています。多くのゲルインクボールペンには顔料インクが使用されており、耐水性・耐光性に優れています。
また、水性インクのような滑らかな書き心地で、インクの出も安定しているため、かすれにくく、美しい文字を書きやすいのが特徴です。色の濃さも十分で、読みやすい履歴書を作成できます。
ボール径の選択
インクの種類だけでなく、ボール径(ペン先の太さ)も重要です。一般的に、履歴書には0.5mm~0.7mm程度のボール径が読みやすく、バランスが良いとされています。細すぎると文字が弱々しく見え、太すぎると文字が潰れて読みにくくなる可能性があります。
以上の点を踏まえ、履歴書を作成する際には、黒色の油性顔料インク、水性顔料インク、またはゲルインク(顔料)のボールペンで、ボール径が0.5mm~0.7mm程度のものを選ぶと良いでしょう。試し書きをして、自分の筆圧や書きグセに合った、最もきれいに書ける一本を選んでください。
ビジネスシーンで最適なインクは?
ビジネスシーンでは、ボールペンを使用する場面が多岐にわたります。
会議のメモ取り、書類への署名、顧客への手紙作成など、それぞれの状況に応じて最適なインクの種類を選ぶことが、業務の効率化や相手への印象向上につながります。
書類作成や署名
契約書や社内外の公式な書類への署名、あるいは長期間保存する必要のある文書を作成する場合には、筆跡の耐久性が求められます。このような場面では、耐水性、耐光性に優れた油性インク(特に顔料系)や、顔料系のゲルインクが最適です。
インクがにじみにくく、改ざんされにくいという点も、ビジネス文書においては重要な要素となります。 黒インクが基本ですが、用途によっては青インクが推奨される場合もあります。
会議のメモや速記
会議の議事録作成や、アイデアを素早く書き留める際には、滑らかな書き心地と速乾性が求められます。低粘度油性インクは、従来の油性インクの信頼性を保ちつつ、サラサラとした書き味で素早い筆記に対応できます。
速乾性も高いため、書いた直後に手が触れても汚れにくいのがメリットです。 ゲルインクボールペンも、滑らかな書き味で速記に向いていますが、製品によっては乾燥に少し時間がかかるものもあるため、速乾性を重視するならその点をチェックすると良いでしょう。
手帳やスケジュール管理
手帳に細かく予定を書き込んだり、色分けしてタスクを管理したりする場合には、細字で色の種類が豊富なボールペンが便利です。この用途には、ゲルインクボールペンが非常に適しています。
0.3mmや0.4mmといった極細のペン先でもインクがかすれにくく、鮮やかな発色で情報を整理しやすいのが特徴です。水性インクも色のバリエーションが豊かですが、手帳の紙質によっては裏抜けに注意が必要です。
顧客への手紙やお礼状
お客様への手紙やお礼状など、丁寧な印象を与えたい場合には、筆跡の美しさも考慮したいところです。ゲルインクボールペンは、滑らかで均一な線を引くことができ、発色も良いため、手書きの温かみを伝えつつ、整った印象の文書を作成できます。
万年筆のような書き味を好む方には、上質な水性ボールペンも選択肢の一つですが、耐水性には留意が必要です。
ビジネスシーンにおいては、TPO(時・場所・場合)に合わせた筆記具選びが大切です。相手に失礼のないよう、また業務の効率を上げるためにも、それぞれのインクの特性を理解し、適切に使い分けることを心がけましょう。
複数の種類のボールペンをペンケースに用意しておくのも良い方法です。
油性・水性インクで落ちないのは?
画像引用:ゼブラ株式会社公式サイト
ボールペンで書いた文字が、水濡れや経年劣化によって「落ちてしまう(読めなくなってしまう)」ことを避けたいと考えるのは当然のことです。ここでは、油性インクと水性インクのどちらが落ちにくいのか、その理由と共に解説します。
耐水性で比較する
「落ちない」という言葉がまず水濡れによる影響を指す場合、一般的には油性インクの方が水性インク(特に染料系)よりも優れています。
油性インクは、主成分である有機溶剤が紙に定着した後、油性の樹脂成分が筆跡を保護するため、水に濡れてもインクが溶け出しにくく、にじみや流れ出しを最小限に抑えることができます。このため、雨の中でメモを取る必要がある場合や、湿気の多い場所で使用する書類などには油性インクが適しています。
一方、水性染料インクは、色素が水に溶ける性質を持っているため、水滴が付着したり、湿気を帯びたりすると、インクが容易ににじんでしまい、場合によっては文字が判読できなくなることもあります。
ただし、水性インクの中でも「顔料インク」を使用したものは、事情が異なります。
顔料インクは、水に溶けない微細な粒子が紙の表面に固着するため、乾燥後は高い耐水性を発揮します。したがって、「水性顔料インク」であれば、油性インクと同等か、製品によってはそれ以上の耐水性を持つこともあります。ゲルインクボールペンの多くも顔料インクを使用しているため、耐水性に優れているものが多いです。
耐光性・保存性で比較する
「落ちない」が、長期間の保存における色あせや変質を指す場合、耐光性も重要な要素となります。
油性インク、特に顔料を使用したものは、光による劣化が少なく、長期間にわたって筆跡の鮮明さを保つことができます。 水性染料インクは、一般的に耐光性が低く、直射日光や蛍光灯の光に長時間さらされると、色が薄くなったり変色したりする可能性があります。
ここでも、水性顔料インクや顔料系のゲルインクは、優れた耐光性を持つ製品が多く、長期保存を目的とする書類にも適しています。
結論として、どちらが落ちにくいか
総合的に見ると、「落ちにくい」という観点では、
- 油性顔料インク
- 水性顔料インク、または顔料系ゲルインク
- 油性染料インク
- 水性染料インク の順になると考えられます(製品の品質や特性により順位は変動します)。
したがって、筆跡の耐久性を最も重視する場合は、インクの種類(油性か水性か)だけでなく、使用されている色素が「染料」なのか「顔料」なのかを確認することが非常に大切です。
パッケージや製品説明に「顔料インク使用」「耐水性・耐光性抜群」といった記載があるものを選ぶと良いでしょう。
ボールペンの油性と水性の違いについてのまとめ
これまでの情報を踏まえ、ボールペンの油性インクと水性インク、そしてゲルインクをどのように選べば良いか、重要なポイントをまとめます。ご自身の用途や好みに最適な一本を見つけるための参考にしてください。
この記事のまとめ
- ボールペンのインクは主に油性、水性、ゲルインクに分類される
- 油性インクは耐水性、耐光性、速乾性に優れ、長期保存書類や複写伝票に適している
- 油性インクの書き味は重めだが、低粘度タイプは滑らかである
- 水性インクは書き味が軽く滑らかで、発色が鮮やか、色の種類が豊富である
- 水性インクはノート筆記やイラストに適しているが、耐水性に劣り、にじみやすい
- ゲルインクは水性をベースに油性の長所を取り入れ、滑らかな書き味と耐水性を両立する
- ゲルインクは発色が良く、色の種類も豊富で、幅広い用途に対応できる万能タイプである
- インクの色素には染料と顔料があり、染料は鮮やかだが耐久性に劣り、顔料は耐久性に優れる
- 見分け方は、製品表示の確認が最も確実で、書き味やキャップの有無も参考になる
- 履歴書には、黒色の油性顔料、水性顔料、またはゲル顔料インクで0.5mm~0.7mm径が推奨される
- ビジネスシーンでは、書類の重要度や筆記内容に応じてインクの種類を使い分けることが大切である
- 耐水性や耐光性を重視し「落ちない」ことを求めるなら、顔料インクが最適である
- 書き心地の好み(重めかしっかりか、軽めかサラサラか)も重要な選択基準となる
- 筆記する紙の種類(薄い紙、コーティング紙など)との相性も考慮すると良い
- 最終的には、用途、求める筆跡の特性、書き心地の好みを総合的に判断して選ぶことが鍵となる